周囲の人々も小声でささやき始めた。
「あの女、見覚えがあるわね。最近テレビドラマで話題になった女優じゃない?見た目は綺麗なのに、なんて悪意のある考えを持っているの?朝倉さんの素敵なドレスを汚すなんて」
「私知ってる、夏目星澄よ。歌は上手いけど、デビューしたばかりの時に離婚歴があって、お金持ちに囲われていたって暴露されたわ。その後どういうわけか花井家の次男と関係を持つようになって、花井風真と早川晴乃の関係も、この女のせいで壊れたって噂よ」
「だから、そんな品性の女が花井お爺様の目に留まるはずがないわ。花井家は風真くんにたくさんお見合いを設定したけど、うまくいかなかったの。その後、どういうわけか朝倉家と連絡を取り合うようになって、朝倉茉莉と風真くんは大学の同級生で、学生時代から風真くんのことが好きだったって聞いたわ。きっとお爺様は誕生日会で二人の関係を発表するつもりなんじゃないかしら」
「じゃあ、風真くんがあの女を連れてきたのは、朝倉家との縁談を知らなかったの?それとも知っていて、わざと連れてきて、お爺様に反抗しているの?」
「さあね、とにかくこれから面白いことになりそうよ」
芦原蘭は周りの人々が夏目星澄のことを噂しているのを聞いて、すぐに調子づいた。「茉莉さん、あなたが優しすぎるから、人に馬鹿にされるのよ。それに、このドレスは1億円以上するのよ。このまま済ますわけにはいかないわ。彼女に教訓を与えないと。でないと、自分の身分や立場がわからないままよ」
周りの人々はドレスがこんなに高価だと聞いて、このまま済ますわけにはいかないと思い、次々と頷きながら議論し、夏目星澄の返答を待った。
花井風真は元々、誕生日会で星澄を連れてきて、お爺様の機嫌が良い時に二人を紹介しようと思っていた。
お爺様が星澄のことをよく知れば、彼女がどれだけ素晴らしい女性かわかるはずだ。
そうすれば、もう様々なお見合いを強要されることもなく、彼の選択を尊重してくれるはずだった。
しかし、お爺様に会う前にこんなトラブルが起きるとは思いもよらなかった。
花井風真は深い自責の念に駆られた。全て自分が悪い、常に星澄を側で守れなかったばかりか、こんな厄介な状況に巻き込んでしまった。