第384章 夏目星澄の何がそんなにいいのか

花井正道は霧島冬真の言葉に腹を立てていた。

彼は今まで生きてきた中で、誰に会っても一目置かれる存在だったのに、目の前の霧島家の若造は全く敬意を示さない。

しかも、とっくに離婚した女のためだ。

この時、ずっと黙っていた花井風真は自分が悪いと分かっていた。もし彼が夏目星澄をお爺様の誕生日会に無理に連れてこなければ、彼女はこんな目に遭わなかったはずだ。

結局は自分に力がなく、夏目星澄を守れなかったのだ。

そして霧島冬真は現れた瞬間から主導権を握り、お爺様を言葉を失わせた。

この抑圧され、抵抗できない感覚に、彼は窒息しそうになった。

花井風真は分かっていた。霧島冬真がこう言うのは、夏目星澄を庇い、彼女の怒りを晴らすためだ。

そして今の自分にできることは、彼の言葉に従い、自分の尊厳を最低限まで下げて、夏目星澄をより高い位置に立たせることだけだ。

これも夏目星澄への償いだと思おう。

花井風真は深く息を吸い、一歩前に出た。「確かに我が花井家は霧島家には及びません。先ほどお爺様が言ったことは、一時の迷いでした。霧島社長、どうかお気を悪くなさらないでください。」

花井正道は突然、花井風真が花井家は霧島家に及ばないと認めたことに、顔を真っ青にして怒った。「風真君、何を馬鹿なことを言っているんだ。今日が何の日か分かっているのか?」

「もちろん今日はお爺様の誕生日だと分かっています。本来なら楽しく過ごしたかったのですが、今は明らかにそうはいきません。それに、私はずっとお爺様に言ってきました。私が夏目星澄さんを追い求めていただけで、彼女は一度も私を受け入れてくれませんでした。だから出世欲なんて全くありません。」

花井正道は怒り爆発寸前だった。

花井風真のこの不肖者め、皆の前で自分を低く見せて夏目星澄を持ち上げるなんて、花井家の面目を丸つぶれにしてしまった!

周りで見物していた人々は、花井風真の言葉を聞いて、皆驚いた。

市長の息子が離婚歴のある女性を積極的に追いかけていたのに、成功していなかったとは誰も想像していなかった。

それなら花井お爺様が今日このような騒ぎを起こしたのは何のためだったのか。相手は孫息子に全く興味がなかったのだから。

「まあ、花井お爺様は自分で自分の首を絞めたようなものね。」