芦原蘭は携帯を置くと、あたりを見回し始めた。
案の定、1分も経たないうちに、使用人が「朝倉さん、朝倉夫人、朝倉さん、こちらへどうぞ」と声をかけるのが聞こえた。
芦原蘭が待ち望んでいた人がついに現れ、彼女は即座に手を振り上げた。「茉莉さん、私はここよ!」
夏目星澄は彼女がそんなに喜んでいる様子を見て、朝倉茉莉とは一体誰なのか気になった。
すぐに夫婦が娘を連れて彼女の目の前に現れた。
中年の男性はオールバックで、高級なスーツを着ており、隣の中年女性は高級ブランドのオーダーメイドドレスを着て、優雅な様子だった。
しかし最も目を引いたのは彼らの娘で、美しく繊細な顔立ちで、気品のある雰囲気を持っていた。
一家が優雅に歩いてくる姿は、まるで絵画のようだった。
花井家の方々は貴賓が来たのを見て、全員が進んで挨拶に行った。
花井雪音は夏目星澄が不快に思うのを心配して、行く前に特に説明を加えた。「夏目さん、ご心配なく。風真さんは朝倉茉莉に興味がないから、二人が一緒になることはありませんよ」
夏目星澄は一瞬戸惑った。花井雪音のその言葉は彼女を慰めているのだろうか?
でも花井風真が誰と付き合うかは、彼女には干渉する権利がないのに、なぜこんなことを言うのだろう?
もしかして花井雪音も彼女と花井風真の関係を誤解しているのではないか...
夏目星澄が説明しようとした時、花井雪音はすでに向こうへ行ってしまっていた。
ちょうどその時、花井風真が戻ってきた。「星澄、大丈夫か?」
夏目星澄は首を振って、「私は大丈夫よ」と答えた。
彼は夏目星澄が無事なのを見て、心が安堵した。
先ほど花井雪音からLINEが来て、夏目星澄が芦原蘭にいじめられたと言われ、すぐに戻るように言われていた。
急いで戻ってきたら、朝倉家の人々が来るところに遭遇した。
この時、周りにも多くの人が挨拶に来ており、朝倉家の三人の身分と地位が並々ならぬものであることが窺えた。
簡単な挨拶の後、花井陽翔が率先して言った。「朝倉伯父さん、朝倉伯母さん、お爺様たちは中におられます。ご案内しましょうか」
「ああ、陽翔君、よろしく頼むよ。そうそう、茉莉はここに残っていなさい。若い人たちで楽しめばいい。私たちは花井お爺様とお話をしてくるから」