第405章 夏目星澄に騙された

田中雨生は怒り心頭で、お金を夏目星澄から取れなかっただけでなく、彼女をこのまま行かせたら、この大量の料理代を誰が払うというのだ！

「まだ食事が終わってないでしょう。続けて食べればいいじゃないですか。私を止める必要なんてありません」

「これはあなたに会うために、おじいちゃんとおばあちゃんが特別に予約したレストランなんだ。当然、支払いはあなたがするべきだろう。帰るなら先に会計を済ませなさい」

夏目星澄は断ろうとしたが、彼らがそう簡単には引き下がらないだろうと思い直し、冷ややかに笑って言った。「そうですか。では、ご親切にもてなしていただき、ありがとうございます。こうしましょう。追加で料理を注文してきましょうか？」

田中太郎がちょうど口を開いた。「パパ、オーストラリア産のロブスターが食べたい。ここには一匹しかないから足りないよ」

田中雨生は息子の太郎をとても可愛がっていて、何を言っても全て承諾した。「いいよ、今すぐお姉ちゃんにオーストラリア産のロブスターをもう一匹頼んでもらおう。たっぷり食べられるようにね」

そう言って夏目星澄を見た。「オーストラリア産のロブスターをもう一匹注文してきて、早く行って早く戻ってきなさい」

夏目星澄は頷くことも断ることもせず、母親の車椅子を押して外に出ようとした。

田中雨生は再び止めた。「一人で行けばいい。母親を連れて行く必要はない」

夏目星澄は冷淡に言った。「母がトイレに行きたいので、ついでに連れて行くんです。でなければ、後でうっかり漏らしでもしたら、その臭いは半端じゃありませんよ。あなたたち、本当に食事を続けられると思いますか？」

田中雨生は躊躇した。夏目星澄が逃げ出すのを恐れて、松岡芝乃に言った。「あなたも一緒にトイレに行きなさい」

松岡芝乃は大切な息子の世話をしているところで、離れたくなかった。「トイレに行くだけでしょう？私が行く必要なんてないわ。息子に食事を食べさせないといけないの！」

夏目星澄はこの光景を冷ややかに見つめていた。

彼女の知る限り、田中太郎は既に成人しているのに、まだ人に食べさせてもらわないと食事ができないなんて。豚のように太っているのも、何の能力もないのも当然だと思った。