夏目星澄はまだ電話中で、自分の母親が霧島冬真と会っていたことなど全く知らなかった。
三浦和靖は言った。「星澄、今回電話したのは、中村英二監督の映画制作に参加してほしいと思ってね。もし興味があれば、まずは脚本を送らせてもらおうと思うんだけど」
夏目星澄は少し驚いた。中村英二監督は国際的にも有名な大物監督だ。自分にどんな資格があって、彼の映画制作に参加できるというのだろう。
「三浦監督、本当に中村監督が私に出演してほしいと?私、演技を始めてまだ間もないし、心配で...」
「もちろん確かだよ。中村監督が君の作品を見て、イメージも雰囲気も作品のキャラクターにぴったりだと思ったから、私に連絡してもらったんだ。オーディションを受けてみない?」
「でも私...」
夏目星澄は母親と霧島冬真の現状を思い出し、急に躊躇してしまった。