第428章 針は自分に刺さってこそ痛みを知る

夏目星澄は冷たい表情で警備員に押さえつけられている田中雨生を見つめ、「警察署へ連れて行きなさい」と言った。

松岡芝乃は田中雨生が本当に警察署へ連行されそうになるのを見て、慌てて夏目星澄の前に駆け寄り、「星澄、お父さんにそんなことしないで。もう60歳近いのよ。本当に刑務所に入れられたら、きっとそこで死んでしまうわ」と懇願した。

夏目星澄は冷たい表情で彼女を見て、「さっき私を殺そうとした時は、結果なんて考えなかったでしょう」と言った。

松岡芝乃は夏目星澄の手を取って必死に懇願した。「それだってあなたが私たちを追い詰めすぎたからよ。今や皆が私たちを非難して、ネットで晒し者にして、どこへ行っても指をさされる。もう生きていけないから、一時の感情で…。今回だけ許してくれない?私たちは約束するわ。すぐに潮見市を出て故郷に帰ります。二度と会うことはないわ。それでいいでしょう?」