第429章 薬を盛られる

夏目星澄は西原妙子が一日中自分の面倒を見てくれたことを思い出し、彼女がワイングラスを自分の前まで持ってきてくれたのを断るのは悪いと思い、「ありがとう」と言った。

西原妙子は夏目星澄が手に持ったまま飲まないのを心配して、わざとグラスを合わせた。

夏目星澄は深く考えずに、赤ワインを少し飲んでみた。確かに美味しかった。

しかし、お酒が進むにつれて、頭がクラクラしてきた。

夏目星澄は自分がお酒に弱いのだと思い、もう限界だと感じたので、監督に一言告げてトイレに向かい、顔を洗って目を覚まそうとした。

しかし、トイレに入るなり、立っていられなくなった。

すぐに携帯を取り出し、神田晓良に迎えに来てもらおうとした。

しかし、なぜか頭がクラクラするだけでなく、手にも力が入らなくなっていた。

途方に暮れていたその時、トイレのドアが開いた。

夏目星澄は必死に顔を上げて、助けを求めようとした。

西原妙子は何も知らないふりをして夏目星澄の側に寄り、心配そうな顔で「あら、どうしたの?」と尋ねた。

夏目星澄は西原妙子の声だと分かり、知っている人で良かったと安心した。自分のハンドバッグを指差して、「お酒を飲み過ぎたみたいで、頭がクラクラして...私のアシスタントに連絡して、ホテルまで送ってもらえませんか」と言った。

「もちろん、すぐに連絡するわ。まずは休憩室で休ませてあげましょう」西原妙子は自然な流れで夏目星澄の携帯を取り上げ、電源を切った。

これで誰かが夏目星澄を探しに来ても、しばらくは見つからないはずだった。

西原妙子は夏目星澄をトイレから連れ出した。

そして芹香さんに引き渡した。

芹香さんは事前に決めていた計画通り、夏目星澄を中村監督の部屋へ連れて行った。

夏目星澄は倒されそうになった時、本能的に芹香さんの腕を掴んで「ここはどこ?帰りたい」と言った。

芹香さんは中村監督が戻ってきて自分を見つけることを恐れ、急いで夏目星澄の手を振り払った。

しかし、振り払った瞬間に夏目星澄に袖のクリスタルボタンを引きちぎられてしまった。

西原妙子はこの時、芹香さんから夏目星澄が部屋に運び込まれ、あとは中村監督を待つだけだという連絡を受けた。

彼女は周りを見回すと、ちょうどウェイターがワイングラスを持って通りかかるのを見て、良いアイデアを思いついた。