霧島冬真の脚はすでにリハビリ訓練の段階に入っていた。
毎日の訓練で心を刺すような痛みがあったが、彼は歯を食いしばって耐え抜いた。
この一ヶ月以上の辛い訓練の結果、彼はもう車椅子を使わなくても良くなった。
原田先生がこの良い知らせを伝えた時、彼は真っ先に夏目星澄に直接伝えたいと思った。
ところが病院に着いたばかりの時、夏目星澄が若い男性と楽しそうに話しながら出てくるのを目にした。
しかもその男性が夏目星澄を見る目は、優しく深い愛情に満ちていた。
それが彼の心を不快にさせた。
すぐに大谷希真にその男の身元を調べさせた。
霧島冬真は車の中に座り、こっそりと二人の後をつけた。
フランス料理店に着くまで、二人は中に入って食事をした。
大谷希真の調査結果が出た。その男は青木智彦といい、夏目星澄の母親の担当医だった。
今回の食事は夏目星澄が青木智彦の世話への感謝の意を示すためだった。
いわゆる恩返しというわけだ。
霧島冬真は夏目星澄が理由もなく男性と食事をするような人ではないことを知っていた。
彼はレストランのマネージャーに連絡を取り、店内の監視カメラの映像を確認した。
二人の食事中の会話は簡単な雑談だけで、何の曖昧な様子もないことを確認した。
霧島冬真はこれが良くないことだと分かっていた。夏目星澄のプライバシーを侵害していたが、どうしても制御できなかった。
自分が心を尽くしている人が、ある日突然いなくなってしまうことが怖かった。
食事が終わりに近づいた頃、その男の目つきが突然変わり、夏目星澄を見る目がより熱を帯びてきた。
同じ男性として霧島冬真は彼が何をしようとしているのかよく分かったので、すぐに夏目星澄に電話をかけ、わざと彼女に会いたいと言った。
それはその男に諦めてもらうためだった。
案の定、青木智彦の表情が変わり、目の輝きも失せた。
一方、夏目星澄は片隅に移動して小声で言った。「母の状態が良くなったら会いに行くって言ったでしょう。」
霧島冬真は自分の望む結果を得て、それ以上追及せず、彼女の言葉に乗って尋ねた。「おばさんの状態は良くなりましたか?」
「かなり良くなったわ。手足も動かせるようになったけど、訓練が必要なの。明日連れて行って様子を見てもらうつもり。」