中村英二は昨日の霧島冬真の人を殺すような様子を思い出し、心臓が一瞬止まりそうになった。
腰も今でもまだ痛くて、まっすぐ立てない。
夏目星澄も当時の霧島冬真が怒っていた様子を想像でき、電話で中村英二に何度も謝罪した。「中村監督、申し訳ありません。彼は故意ではなく、ただ私のことを心配しすぎて、うっかりあなたを傷つけてしまったんです。本当に申し訳ありません。」
中村英二は深いため息をついた。「まあいいよ。事情があったのは分かっている。でも昨日の出来事は本当に不可解だった。どうして突然私の部屋に現れて、薬まで飲まされていたんだ?」
彼は昨晩一晩中考えても、誰が自分と夏目星澄を陥れようとしたのか分からなかった。
夏目星澄は証拠がないため、監督に自分の疑いを軽々しく話すことができなかった。「中村監督、これは多分あなたを狙ったものではなく、私を狙ったものだと思います。真相は調査させます。」
「私を狙ったものでなくても、私を利用したということだ。犯人を見つけたら、絶対に許さないぞ!」
中村英二は芸能界で長年過ごしてきて、このような卑劣な手段を数多く見てきた。
ただ、まさか自分に対してそんなことをする人がいるとは思わなかった。
夏目星澄が調査しなくても、彼は必ずこの人物を突き止めるつもりだった!
中村英二が電話を切ってまもなく、また携帯が鳴った。今度は西原妙子からだった。「中村監督、私です。昨晩、着替えに戻られてからずっと戻って来られなかったじゃないですか?何かあったんじゃないですか?一晩中心配していたんです。」
西原妙子は昨晩、中村英二が激怒して夏目星澄を追い出すというニュースを待っていたのに、何も起こらず、すべてが平穏だった。
芹香さんの方で問題があったのかと思った。
しかし芹香さんは確実に部屋まで送り届け、中村英二が部屋に入るのも目撃したと断言していた。
なのに今まで何も起きていない。これは西原妙子の心を不安にさせた。
もしかして夏目星澄が機会を利用して本当に中村英二を誘惑し、成功したのではないか?
そうなると、彼女は他人のために嫁入り道具を作ったことになる。
だから諦めきれずに中村英二に電話をかけ、昨晩何が起きたのか知りたかった。