霧島冬真も後ろの音を聞いて、振り返った瞬間、バイクが突っ込んできていた。
彼は急いで夏目星澄の手を引いて外へ逃げ出した。
しかし、二人ではバイクの速さには及ばなかった。
衝突寸前、霧島冬真は避けられないと悟り、夏目星澄を突き飛ばして彼女の安全を確保しようとした。
だが夏目星澄に強く引き止められ、「だめ、冬真、そんなことしないで」
彼は既に彼女を救うために一度死にかけていた。
今度は絶対に事故に遭わせるわけにはいかない!
夏目星澄は逆に霧島冬真を突き飛ばした。
これは霧島冬真が予想していなかったことだった。
しかし気付いた時には既に遅かった。
「星澄、やめろ!」
この光景を目にした人々は皆、思わず息を呑んだ。
女性ファンたちも驚愕して口を押さえた。
彼女たちは夏目星澄が嫌いで、浩真さんに謝罪させ、芸能界から追放したかっただけだった。
命を奪うようなことは考えてもいなかった。
それは刑務所行きになるのだ!
夏目星澄は目を閉じ、はね飛ばされると思った。
しかししばらく経っても、体に痛みは全く感じず、代わりに大きな音が聞こえた。
目を開けてみると。
そのバイクは既に大谷希真の車に弾き飛ばされていた。
彼女は無事だった。
次の瞬間、彼女は再び馴染みの腕の中に抱きしめられた。「星澄、大丈夫か?」
夏目星澄は首を振って、「私は大丈夫、あなたは?」
霧島冬真の深い瞳は心配に満ちていた。「俺も大丈夫だ。でも、なんてバカなことをしたんだ。俺を突き飛ばして、お前はどうするつもりだった」
夏目星澄も同じように心配そうに彼を見つめた。「あなただって同じでしょ!」
この時、車から這い出してきた大谷希真は泣きそうな顔をしていた。
誰も彼のことを心配してくれないのか?
幸い警察が現場にいて、すぐに出動してバイクの運転手を捕まえ、救急車も呼んで大谷希真を病院に搬送した。
残りのファンたちも全員警察署に連行され、一斉に事情聴取を受けた。
ファンの暴動は何とか収まった。
夏目星澄は先に帰宅して休むよう言われた。
体についた臭いがひどくて、長時間かけてやっとその不快な臭いを取り除くことができた。
彼女が出てきた時、林田瑶子は既に階下で目を真っ赤に泣いていた。