夏目星澄と中村英二は全ての話し合いを終えた後、オーディション会場を後にした。
外に出ると、神田晓良が興奮した様子で近づいてきた。「星澄さん、すごいですね!監督が直接あなたを主役に決めたなんて。影后さんは出番すらなかったのに。」
「私も、こんなに運が良いとは思わなかったわ」夏目星澄は胸をなでながら安堵の表情を浮かべた。今でも心臓が激しく鼓動しているのを感じる。
神田晓良は夏目星澄の前に寄り、小声で褒め称えた。「やっぱり演技力があったからこそ、監督がその場で決められたんですよ。副監督がこのニュースを発表した時、外で待っていた人たちが呆然としていたんです。特に影后さんは、顔が完全に崩れていましたよ。」
夏目星澄は表情を硬くした。知らず知らずのうちに影后の怒りを買ってしまったようだ……