第424章 彼女の誠意が彼の心を動かした

西原妙子は気が収まらず、助監督に夏目星澄の身元について尋ねてみた。

「武史兄貴、この夏目星澄って一体何者なの?どうして彼女はオーディションの後すぐに決まったの?もしかして最初から彼女に決まっていて、私たちは形だけのオーディションだったの?」

武史兄貴は首を振った。「西原さん、中村監督の性格をまだ分かってないんですか?彼が事前に役者を決めたことなんて一度もないでしょう。でも、この夏目星澄については少し知っています。三浦和靖の推薦で、監督が彼女の演技を見て、イメージと雰囲気が合っていると思ってオーディションに呼んだんです。まさかこんなに早く決まるとは思いませんでしたけど。」

「つまり、この夏目星澄と三浦和靖の関係は普通じゃないってこと?」

「以前共演して大ヒットしましたからね。関係が普通じゃないのは確かです。」

「共演以外には、プライベートでも...」西原妙子は含みのある質問をした。

武史兄貴は慌てて首を振った。「それは分かりません。言えることは全て言いました。他の用事があるので、失礼します。」

西原妙子は知りたかったことが聞けず、気分が落ち込んでいた。

そこへ彼女のマネージャーの芹香さんが近づいてきた。「妙子、どうなの?監督が主役を決めたって聞いたけど、新人だって?」

西原妙子は不機嫌そうに目を回した。「知るわけないでしょ。私がまだ演技も見せてないのに、落選って言われちゃったのよ。誰に文句言えばいいの。」

芹香さんは眉をひそめた。「このまま黙っているわけにはいかないわ。これは中村監督の作品よ。主役が無理なら、脇役でもいいから、監督と相談してみるわ。」

「何ですって?芹香さん、正気?私が新人の脇役なんてやるわけないでしょ!」

「落ち着いて、話を聞いて。もちろん新人の脇役なんてさせるつもりはないわ。まずは撮影現場に入って、それからその新人を追い出すの。そうすれば主役の座は空くでしょ。あなたの演技力なら絶対大丈夫よ。」

西原妙子は不満そうに言った。「え?じゃあ私は代役ってことになるじゃない。」

芹香さんは自信満々に言った。「バカね、映画が公開されて成功したら、あなたのことばかり宣伝されるのよ。最初にオーディションに受かった人なんて誰も気にしないわ。」