第423章 生まれながらの役者

第四百二十三章 生まれながらの役者

中村英二は夏目星澄について印象を持っていた。映画の撮影を決定する前に、業界の友人たちから多くの推薦を受けていた。

その中には夏目星澄も含まれていた。

彼女の演技力は同世代の俳優の中でも際立っており、最近では新人賞も受賞し、注目を集めていた。

中村英二は夏目星澄を遠慮なく審査し、うなずきながら、彼女の容姿に満足していた。

「台本は読んだか?」

「はい、読ませていただきました」

「よし、では演技を始めてください」

夏目星澄は一瞬目を伏せ、二秒ほど沈黙した後、顔を上げた時には目の表情が変わっていた。

彼女が今日演じる役は龍族の姫、白石鈴乃だった。

ある神魔大戦の際、好奇心から龍宮城をこっそり抜け出し、戦いの全てを目撃した。

最後に武神が勝利を収めたものの、深手を負って海に落ち、行方不明となった。

鈴乃は深海で天音鳴真を発見し、自身の龍玉で彼を救った。

三ヶ月後、天音は目覚めたが、記憶を失っていた。

次第に彼は活発で可愛らしい鈴乃に恋をした。

二人の結婚式の当日、武神の婚約者である天族の姫、鳳乃雫が現れ、霊草で天音の記憶を取り戻させた。

天音は鈴乃のことを忘れ、そのまま天宮へ戻ってしまった。

しかしその時、鈴乃はすでに身籠っていた。

彼女が一人で子供を産もうとしていた時、天族に発見され、天上へ連れて行かれた。

表向きは武神の血脈を守るためとされたが、実際は武神をより良く制御するためだった。

鈴乃は純真で、武神が記憶を取り戻し、母子を大切にしてくれると信じていた。

しかしそれは天族の策略に過ぎなかった。

天音は確かに記憶を取り戻していたが、天宮が安全でないことを知っており、鈴乃への愛情を表すことができなかった。

鈴乃は天宮で冷遇され、心を病んでいった。

鳳乃雫も様々な方法で鈴乃を困らせ、自分の体を傷つけてまで鈴乃を陥れ、最後には両目を失明した。

天帝は娘の仇を討つため、鈴乃の目を抉り取ろうとした。

天音は天帝の部下が鈴乃の命を危険に晒すことを恐れ、自ら手を下すことを願い出て、鈴乃の目を奪い、鳳乃雫を治した。

鈴乃は深い悲しみに暮れ、激しい感情の中で子供を産んだ。

本来なら子供と一緒に去るつもりだったが、自分が目が見えない状態で子供の面倒を見られないと考え、一人で去ることにした。