第422章 映画のオーディション

夏目星澄は松岡静香を心配させないように、出張に行くと嘘をついた。

霧島冬真は病院に残って彼女の世話を続けていた。

しかし夏目星澄は、彼自身も患者であるのに、そんなに苦労させたくなかった。

霧島冬真の足は車椅子から解放されたものの、完全に回復するにはまだ長期のリハビリが必要だった。

夏目星澄の刀傷は深くなく、病床で一週間過ごせば歩けるようになった。

彼女がベッドから降りて最初にしたことは、坂口嘉元を見舞うことだった。

あの時、彼が適切なタイミングで現れて、あの変態男から彼女を守ってくれなかったら、霧島冬真が来るまで持ちこたえられなかっただろう。

だから坂口嘉元は命の恩人であり、きちんとお礼を言わなければならなかった。

坂口嘉元の体調も少し回復し、ベッドで本を読んでいた。