第439章 私が夏目星澄の証拠だ

高橋浩真は夏目星澄の質問に少し戸惑ったが、すぐに平常心を取り戻した。芸能界で長年過ごしてきた経験は無駄ではなかった。

芸能人として、嘘をつくことは必須条件だ。

そうでなければ、キャラ設定を確立し、より多くのファンを魅了することはできない。

高橋浩真は軽く咳払いをして、「夏目さんは私に証拠がないと言いますが、あなたにはあの夜、私を誘惑しようとしなかった証拠がありますか?」

彼の後ろにいた記者たちも、高橋浩真の言葉に納得した様子だった。

夏目星澄が潔白を証明したいのなら、証拠を示す必要がある。

「そうですね、夏目星澄さん。あなたが無実だと言うなら、中村監督の件と同じように、証拠を示してください」

「それに、高橋浩真さんとあなたには何の恨みもないはずです。なぜ彼があなたを陥れる必要があるのでしょうか?」

記者会見場は嵐のような質問で溢れ、記者たちは警備員の制止を振り切って前に押し寄せ、夏目星澄を取り囲んだ。

楽屋で様子を見ていた林田瑶子は、この光景に焦りを感じた。

高橋浩真という男は、ここまで厚かましいとは。

彼は夏目星澄と何も起こらなかったことを知っているのに、まだ彼女に証拠を要求している。

本当に狡猾すぎる!

林田瑶子は焦りを感じながらも、どうやって星澄を助けられるか分からなかった。

突然、彼女は霧島冬真のことを思い出した。

「おかしい、こんな大事なことが起きているのに、霧島冬真が何の動きも見せないはずがない。彼は何を待っているの?」

林田瑶子は携帯を取り出して霧島冬真に電話をかけたが、つながらなかった。

「どうなってるの、こんな大事な時に、霧島冬真が電話に出ないなんて。もう星澄のことを気にかけていないの?」

東條煌真は林田瑶子が息を切らしているのを見て、心配になった。「奥さん、落ち着いて。霧島社長は何か用事があって、星澄さんを助けられないんだと思います。もう少し待ちましょう」

「何を待つの?あの記者たちが星澄を食い物にしようとしているのが見えないの?だめ、私が行って抗議してくる」

東條煌真は林田瑶子をしっかりと抱きとめ、「奥さん、行っちゃだめです。お腹の子供がいるんだから、興奮してはいけません。もし記者たちがあなたと赤ちゃんを傷つけたらどうするんですか?」