第456章 キスシーンの代役

キスシーン?

霧島冬真はその二文字を聞いて、全身が不快感に包まれた。

「撮らなくてもいいのか?」

「もちろんダメよ。ストーリー展開に必要だし、これは恋愛ファンタジーなのよ。キスシーンがないのはおかしいでしょう。だから前もって言っておくわ」

霧島冬真は怒りを感じたが、それを表に出すことはできなかった。

彼は夏目星澄がこの映画をしっかり撮り終えるまで待つと約束したのだ。その約束を破るわけにはいかない。

しかし、自分の女が他の男とキスをするのを見過ごすなんて、とても耐えられない。

夏目星澄は明らかに霧島冬真の様子がおかしいことに気づき、そっと尋ねた。「私の仕事、理解してくれるよね」

霧島冬真は重々しくうなずいた。

夏目星澄は彼の手を取り、優しく慰めるように言った。「じゃあ、先にホテルで待っていて。撮影が終わったらすぐ戻るから」