子供の無事を確認し、夏目星澄はすっかり安心した。
二人が病院を出ようとしたその時。
一階のロビーで激しい口論と子供の泣き声が聞こえてきた。
中年の女性が若い女の子の手首を掴んで外に引っ張り出そうとしていた。「この馬鹿娘め、家のお金を盗んで無駄遣いするなんて、早く帰るのよ!」
女の子は子供を抱きながら地面に跪いて母親に必死で懇願した。「お母さん、お願い、連れて行かないで。無駄遣いなんてしてません。ただふゆちゃんの病気を治すためなの。もう三日も熱が続いてるの。このままじゃ死んでしまう!」
中年の女性は地面に跪く娘に対して同情するどころか、さらに怒りを募らせた。「ふん、こんな下賤な娘を産んでしまうなんて。外の男と関係を持って、こんな畜生を産まなければ、お父さんに怒られたり、お婆ちゃんに虐められたりすることもなかったのよ。全部お前が悪いの。早く死んでくれた方がいい。そうすればお前を嫁に出して、弟の結納金にできるのに!」