小山千恵子がまた第一病院に行ったと聞いて、桜井美月は最初、気にも留めなかった。
血液科の人々は、すでに彼女の支配下にあった。
言うことを聞かない横山先生も、とっくに海外に追いやられていた。
白野部長から電話がかかってきて初めて、千葉家の次男の庇護の下、小山千恵子があんなに大がかりな態勢で来ていることを知った。
「桜井さん、彼らは単に機器を借りに来ただけで、病院と直接調整したんです。私にも介入できません」
白野部長が撮った写真を開くと、桜井美月の心は宙づりになった。
以前の小山千恵子は、彼女の圧迫に逆らわず従い、ただ岩崎さんの愛を取り戻すことだけを考えていた。
今の彼女は、きっと反撃に出るつもりだ。
しかも、千葉家の次男が後ろ盾についている。
桜井美月の目に凶光が走った。絶対に手をこまねいているわけにはいかない!
「白野部長、彼女の検査結果を見ましたか?あとどのくらい生きられるんですか?」
白野部長の眼鏡が光り、小山千恵子の本当の血液検査報告書を思い出した。
「病状の進行が早く、化学療法と投薬だけでは問題解決できないでしょう。やはり骨髄移植が必要です。時間的には、適合ドナーが見つからなければ、半年くらいでしょうね」
桜井美月は聞けば聞くほど嬉しくなり、目に打算が光った。
半年!
あと半年待てば、小山千恵子という女は永遠に彼女と岩崎さんの世界から消えるのだ!
今すぐシャンパンを開けて祝いたい気分だった。
感情を落ち着かせると、桜井美月は陰険な表情を浮かべた。大スクリーンに映る愛らしい妹のイメージとは正反対だった。
「最近、私を狙っている人がいるわ。白野部長、慎重に行動してください」
骨髄穿刺室内では、医療チームがサンプル採取を終えたが、小山千恵子はまだ目覚めていなかった。
彼女は元々痛みに弱い人で、すぐに気を失ってしまった。
骨髄を刺す深い痛みは、確かに普通の人には耐えられないものだった。
小山千恵子はベッドに横たわり、額には細かい冷や汗が浮かんでいた。
ボディーガードが千葉隆弘に近づき、恭しく報告した。
「二少様、病院の入り口にパパラッチが大勢います。おそらく小山お嬢さんを狙ってのことでしょう」
千葉隆弘は眉をひそめ、小声で尋ねた。視線は一瞬も小山千恵子から離れなかった。
「早く離れないと。何人いる?」