病院の入り口は人だかりで騒がしく、通常の交通を妨げていた。
小山千恵子は藤原晴子を掴んで、早く車に乗って離れようとした。
しかし、増え続けるアンチファンとパパラッチに阻まれ、身動きが取れなかった。
病院の警備員が現場に駆けつけたが、すぐには対処できなかった。
「説明しろ、さもないと今日は帰れないぞ!」
「黙って病気のふりか?聾唖者になったのか?」
藤原晴子は、さすがプロのアンチファンだと思った。一言一言が小山千恵子を罠に陥れようとしていた。
浅野武樹の黒いカレンが第一病院に到着したが、入り口は人で溢れていた。
寺田通は一瞥して言った。「社長、車は入れません。先に人を中に入れましょう。」
浅野武樹は黙って後部座席に座り、窓ガラス越しに見つめていた。
漆黒の瞳孔が収縮し、群衆の中のあの青白い顔を見つけた。