病院の入り口は人だかりで騒がしく、通常の交通を妨げていた。
小山千恵子は藤原晴子を掴んで、早く車に乗って離れようとした。
しかし、増え続けるアンチファンとパパラッチに阻まれ、身動きが取れなかった。
病院の警備員が現場に駆けつけたが、すぐには対処できなかった。
「説明しろ、さもないと今日は帰れないぞ!」
「黙って病気のふりか?聾唖者になったのか?」
藤原晴子は、さすがプロのアンチファンだと思った。一言一言が小山千恵子を罠に陥れようとしていた。
浅野武樹の黒いカレンが第一病院に到着したが、入り口は人で溢れていた。
寺田通は一瞥して言った。「社長、車は入れません。先に人を中に入れましょう。」
浅野武樹は黙って後部座席に座り、窓ガラス越しに見つめていた。
漆黒の瞳孔が収縮し、群衆の中のあの青白い顔を見つけた。
小山千恵子は腕を抱えて身を守り、周りのパパラッチのレコーダーが彼女の顔に迫っていた。
病気で弱っているように見え、歩くのも不安定だった。
彼女は昔から痛みに弱く、病院にも行きたがらなかった。
最近会うたびに、ほとんどの場合、病気を患っているようだった。
浅野武樹の心は複雑な思いで一杯で、心が見えない手でゆっくりと締め付けられるようだった。
突然、十数人のボディーガードが遠くから集まってきて、素早く群衆を押しのけ、空間を確保した。
藤原晴子は小山千恵子を抱えて急いで車に向かった。
寺田通は自分の目を疑った。
ボディーガードを入れたばかりなのに?まだ車から降りていないのに。
これらの人々は……
「私の部下ではない。」
浅野武樹は心を読むかのように、声を冷たくして、膝の上の手を拳に握りしめた。
考えるまでもなく、きっと千葉家の人間だ。
彼が急いで来る必要もなく、すでに誰かが後ろで護衛を待っていたようだ。
浅野武樹の目から優しさが消え去った。
彼は少し窓を下げ、冷たい視線で小山千恵子を追った。
藤原晴子のジープラングラーは近くに停まっていたが、車が高すぎて、小山千恵子は苦労して乗り込んだ。
浅野武樹は彼女の腕の青あざと、足首の新しい包帯に気づいた。
彼女は一体どうしたのだろう?
なぜいつも体に怪我をしているのだろう。