浅野武樹は顔を曇らせた。
「必要ない。美月、自分のことを大切にしなさい」
桜井美月の表情が一瞬変わり、驚いたような様子で、すぐに目に涙が溢れ、震える声で話し始めた。
「そう、ですね...私は半身不随で、子供も産めない。岩崎さんは誰と結婚しても、私よりはましでしょう。私が勝手に期待してしまっていただけ...」
浅野武樹は拳を握りしめ、心の中で嫌悪感が湧き上がった。
さすがは桜井美月、モラルハラスメントは手慣れたものだ!
浅野遥は桜井美月を見つめ、表情が和らいだ。
「美月、お前の体は、叔父さんが必ず治してあげる。お前の提案も悪くない。武樹、千恵子との愛情が無くなったのなら、美月と結婚すれば、桜井唯の御霊にも申し訳が立つだろう」
桜井美月の心は狂喜した!
彼女は岩崎さんがすぐには承諾しないだろうと予想していた。