第40章 少しだけ抱かせて、いい子だから

浅野武樹は少しイライラして、手を伸ばしてネクタイを緩め、スーツの上着をソファの背もたれに投げた。

彼はビジネス界で長年活躍してきたが、誰にも脅されたことはなかった。

一つは誰も浅野家を脅す勇気がないこと、二つは彼自身にも弱みがなかったからだ。

しかし小山千恵子はいつも彼の首に刃を突きつけることができた。

彼は小山千恵子の白い腕に広がる青あざを目にした。

また自分が力加減を失ったのだろうか?

小山千恵子は今、ガラス人形よりも脆くなっている。

「小山千恵子、これまで浅野家はお前に薄情ではなかった。恩を知るなら報いるべきだ」

浅野武樹は田島さんに夕食の準備を指示し、落ち着いて長テーブルに座り、カフスボタンを外しながら話を続けた。

「お前と桜井美月の間のこういった小細工は気にしない。ただし、やり過ぎるな」