千葉隆弘のボディーガードが機を見て動き、数人のボディーガードを制圧した。
防衛線に隙が生まれ、小山千恵子は手を引かれて機内扉へと走った。
彼女は振り返り、絶望的な眼差しで浅野武樹を見つめた。
遠くで、黒髪に黒い瞳の男の目には怒りが満ちていて、激怒したライオンのようだった。
浅野武樹は目を赤く染め、小山千恵子の後ろ姿に激怒していた。
彼女をこのまま行かせるわけにはいかない!
「小山千恵子!お前が行けば、療養院は小山敏夫の治療を打ち切る!」
浅野武樹はこれまで、小山旦那様に少しでも害を与えようとは考えもしなかった。
この瞬間、小山千恵子よりも、彼の方が追い詰められているように見えた。
小山千恵子は急に足を止め、驚いて浅野武樹の方を振り返った。
見慣れた顔立ちと端正な容姿が、この瞬間はとても見知らぬものに感じられた。