深夜。
小山千恵子は鋭い痛みで目を覚ました。
目を開けると真っ暗で、周りには医療機器のランプだけが点滅していた。
顔には酸素マスク、体には様々なチューブが繋がれていた。
手術の麻酔が切れ、体中が痛みで悲鳴を上げていた。
ただの熱が、どうしてこんなことに……
初めて、小山千恵子は死がこんなにも近くにあることを実感した。
いや、二度目だ。
浅野武樹と結婚したばかりの頃、島でバカンスを過ごした時のこと。
小山千恵子は暑さに弱かったが、遊び好きだった。
重度の熱中症で、熱射病で命を落としかけた。
その時、浅野武樹は完全防護服を着てでもICUで彼女を見守っていた。
「俺の目の前で、一瞬たりとも離れられない」
小山千恵子は浅野武樹が焦って言ったその言葉を覚えていた。
「千恵子ちゃん、死ぬなら俺の側で死んでくれ!」