第30章 小山お嬢さんの容態が悪化

浅野武樹は桜井美月を自分の黒いカリナンの後部座席に座らせ、自身も乗り込むと、車は素早く帝都ホテルを離れた。

桜井美月は落ち着いているふりをしていたが、緊張していた神経がこの瞬間に崩れ去った。

彼女は頭を傾け、浅野武樹の肩に伏せて、止まらないほど泣き出した。

「岩崎さん、ごめんなさい……」

浅野武樹は座ったまま動かず、横を見ながら尋ねた。「なぜ謝るんだ?」

桜井美月は涙を拭いながら言った。「私が現れてから、ずっと岩崎さんに迷惑をかけてきました。今回は千恵子さんの安全を守りたかっただけなのに、また失敗してしまって……どうしてこんなことになってしまったんでしょう。」

浅野武樹は一瞬躊躇してから、ティッシュを一枚取り出して彼女に渡し、低い声で話し始めた。

「調査する。木下さんの携帯電話は、私のチームが解析を手伝ったからな。」