桜井美月は車椅子に座ったまま、雑誌のインタビューを受けていた。
彼女は白いドレスを着て、春の無害な小さな花のようだった。
浅野武樹は片手にウイスキーを持ち、隅に座って仕事をしていた。
目立たない場所にいても、無視できない威圧感を放っていた。
桜井美月の心は甘く溶けていた。
今日、岩崎さんはチャリティーパーティーに来ただけでなく、インタビューにも付き添ってくれた。
帝都のお嬢様たちが皆欲しがるような男性が、もうすぐ彼女のものになる。
寺田通は脇に立ち、多くの書類を持って、順番に浅野武樹に署名を求めていた。
周りの人々は小声で噂していた。
「浅野若様は桜井さんにとても優しいわね。小山千恵子と結婚していた時は、二人一緒の姿なんてめったに見なかったのに」
「お金持ちってそんなものよ。愛情があるときは何でもくれるけど、冷めたら一蹴するのよ」
「帝都のお嬢様がたくさんいるのに、浅野若様が障害者と結婚するなんて、ちょっと…」
「妬いてるだけでしょ。彼女のお父さんは浅野旦那様の命の恩人なのよ」
浅野武樹は一束の書類に署名を終え、眼鏡を外して寺田通に渡した。
腕時計を見て、眉をひそめた。
どうでもいい場所で、半日も時間を取られてしまった。
かつて小山千恵子とイベントに出席した時、彼女はいつもデザイナーとして出席していた。
浅野奥様と呼ばれるのを嫌がり、特に彼と一緒に写真に写るのを最も嫌っていた。
浅野武樹も感情的になり、理由を尋ねたことがあった。小さな女は理屈っぽく答えた。
「せっかく自分のブランドを築いたのに、あなたの力を借りたなんて言われたくないの」
そのため、帝都の大小のイベントで、浅野武樹と小山千恵子は別々に出席することが多かった。
夜になって家でベッドに横たわり、彼女がイベントでの面白い出来事を生き生きと語るのを聞いて、抱き合って眠る。
長年、彼はそれに慣れていた。
浅野武樹は無意味な回想を断ち切り、立ち上がってスーツのボタンを留めた。
もうここで時間を無駄にするつもりはなかった。
「寺田通、会社に戻る準備を」
しかし、喧騒に包まれていたパーティー会場が突然静かになった。
記者たちは私語を交わしながら、桜井美月のインタビューエリアに急いで集まってきた。
人が増え続け、カメラのフラッシュが絶え間なく光った。