桜井美月は車椅子に座ったまま、雑誌のインタビューを受けていた。
彼女は白いドレスを着て、春の無害な小さな花のようだった。
浅野武樹は片手にウイスキーを持ち、隅に座って仕事をしていた。
目立たない場所にいても、無視できない威圧感を放っていた。
桜井美月の心は甘く溶けていた。
今日、岩崎さんはチャリティーパーティーに来ただけでなく、インタビューにも付き添ってくれた。
帝都のお嬢様たちが皆欲しがるような男性が、もうすぐ彼女のものになる。
寺田通は脇に立ち、多くの書類を持って、順番に浅野武樹に署名を求めていた。
周りの人々は小声で噂していた。
「浅野若様は桜井さんにとても優しいわね。小山千恵子と結婚していた時は、二人一緒の姿なんてめったに見なかったのに」
「お金持ちってそんなものよ。愛情があるときは何でもくれるけど、冷めたら一蹴するのよ」