小山千恵子は食卓にいる浅野遥を見つめ、心の底から寒気を感じた。
小山家と浅野家に関わる重大な秘密を、家長である彼がこれほど長い間冷静に隠し通せるなんて。
浅野武樹の車に乗っても、小山千恵子は無意識のうちに考え込んでいた。
浅野武樹は久しぶりに寺田通を呼ばずに、自ら運転して小山千恵子を送ることにした。
「どこへ行く?療養院?」
小山千恵子は首を振り、携帯を確認して浅野武樹に位置情報を送信した。
彼に遠慮する必要もない、無料の運転手は使わない手はない。
それに今日は確かに遠くへ行く用事があった。
浅野武樹は携帯を開いて確認し、助手席に座る平然とした女性を厳しい表情で見つめた。
泉の別荘、黒川家の領地だ。
彼女はそこで何をするつもりだ?
浅野武樹の鋭い視線を感じ取り、小山千恵子は彼を見た。「浅野社長、都合が悪いですか?」