小山千恵子は自分の持ち物を簡単に整理したが、立ち上がらなかった。
「黒川奥様のお時間を頂き、ありがとうございます。帰る前に、理由だけは知りたいのですが」
橋本博文は渋々立ち上がり、また座り直すべきか迷っていた。
彼女は『新入生』の番組から、小山千恵子が頑固な性格だと知っていた。
おそらく死ぬときでさえ、納得してから死にたいタイプだろう。
黒川奥様の視線が小山千恵子に向けられ、次第に鋭くなっていった。
彼女は橋本博文を見て言った。「橋本さん、申し訳ありませんが、外の部屋でお待ちいただけますか。この小山お嬢さんに少しお聞きしたいことがありまして」
橋本博文が部屋から消えると、小山千恵子は毅然とした目で黒川奥様を見つめた。
もし黒川奥様が既に人選を決めていたのなら、彼女の立場上、わざわざ二度足を運ばせることはないはずだ。