藤原晴子は少し驚いた。
おや、浅野武樹のこの老いぼれ、目が覚めたのかしら?
藤原晴子はバッグを肩に掛け直し、寺田通を婦人科の診察室へと引っ張っていった。
「急いでるの、歩きながら話しましょう」
寺田通は一瞬戸惑ったが、引っ張られるままについていき、少し気まずそうに口を開いた。「何を...話すんですか?」
話すべきことも話すべきでないことも、ほとんど全て彼女に話したのに、まだ何を話せというのか?
藤原晴子は急いで歩きながら、向こうから慌てて来た患者とぶつかりそうになった。
寺田通は彼女の手の力を借りて、彼女を自分の方に引き寄せ、少し距離を空けた。
「慌てないで、ゆっくり歩きましょう」
藤原晴子は彼の言葉を無視した。「それで、桜井美月の怪我は演技だったの?浅野武樹はどうして疑い始めたの?」