第87章 招待客リストに小山千恵子の名前はない

千葉隆弘は溜息をつき、小山千恵子を優しい眼差しで見つめた。

彼は自分の心の中でよく分かっていた。多くの場合、彼女を助けたいと思うのは、ただ自分の存在感を示したいだけだった。

小山千恵子の小さな体には、確かに大きな力が秘められていることは否定できなかった。

時には、千葉隆弘は彼女があまり強くならないでほしいと願っていた。少しでも弱さを見せてくれれば、彼が彼女を守る機会が得られるのに。

小山千恵子は小部屋から昔のドレスを探し出し、アイロンをかけるために取り出して掛けた。

控えめで上品な墨緑色のチャイナドレスで、スリットからは孔雀色の鮮やかな裏地が垣間見え、後ろ裾には数本の羽が優雅に垂れていた。

このような場では、目立ちすぎたくなかった。手がかりを見つけたら、すぐに静かに立ち去れればよかった。

翌朝早く、小山千恵子は楓の里へ向かう準備を始めた。

玄関に相変わらず待機している黒いマイバッハと、一度も離れることのない数人の大柄なボディーガードを見て、小山千恵子は一瞬恍惚とした。

浅野武樹と最後に会ってから、もう数日が経っていた。

この間、珍しく彼は彼女に嫌がらせをしてこなかった。

その間、小山千恵子は寺田通に連絡を取り、区役所で離婚届を出す時間を予約しようとした。

寺田通は少し躊躇いがちで気まずそうな口調で、浅野社長がA国に行ったと伝えた。

小山千恵子はそれ以上何も言わず、電話を切った。

桜井美月がA国でリハビリ中だったので、浅野武樹がA国に何をしに行ったのか聞くまでもなかった。

小山千恵子は自分の心の中にある虚無感が、過去への未練なのかどうかも分からなかった。

しかし、より多く残っているのは、痛みを経た後の麻痺だった。

入り口に着くと、まだ時間が早かったので、小山千恵子はバッグから招待状を取り出して差し出した。

彼女は黒いコートをしっかりと身に纏い、早めに入って問題を起こさないようにしようと考えた。

受付係は驚いた表情を見せ、招待状を受け取って二度確認した後、恭しく扉を開け、お辞儀をした。

「小山お嬢さま、貴賓の方、こちらへどうぞ」

ちょうどその時、入り口で生花を運んでいるスタッフが次々と入っていき、最後尾の人が足を踏み外し、高く積まれた花束が崩れそうになった！

小山千恵子は素早く支え、すぐにスタッフのサービスを断った。