第106章 彼女は真実に近づいていた

黒川家と浅野家の因縁は、複雑で奇妙なものとなっていた。

もし両家が前の世代で深い絆があったのなら、なぜ今になって表面化したのか……

小山千恵子は眉をひそめて物思いに沈み、しばらくして我に返ると、自分が浅野武樹のことで悩んでいたことに気づいた。

彼女は余計な思いを振り払い、心を落ち着かせた。

もう彼女は浅野家の一員ではない。浅野家の生死も、浅野武樹の運命も、自分とは何の関係もないはずだった。

小山千恵子は背筋を伸ばし、真剣な表情で言った。「桜井美月はもう波風を立てられないのだから、私は母の死の真相を調べることと、実の父を探すことに専念するつもりです。浅野家のことは、もう私には関係ありません」

小山千恵子はそれを千葉隆弘と藤原晴子に言うというより、自分自身に言い聞かせているようだった。

桜井美月は惨めな姿で浅野実家に戻ったが、浅野武樹と浅野遥に会う間もなく、警察署に呼び出された。

彼女は左右から挟まれるようにパトカーに乗せられ、虚ろな目で黙ったまま取調室に入った。

桜井美月は石のようで、自白もせず抵抗もせず、目には常に火の光があり、何かを待っているようだった。

「私を閉じ込めておけないわ」

彼女は狂ったように、いつもそうつぶやいていた。

何人もの弁護士が来たが、彼女の協力的でない態度に皆逃げ出してしまった。

桜井美月が拘留されたという知らせを受けたとき、小山千恵子は小山実家への帰り道だった。

藤原晴子が運転する車の中で、浅野グループの首席弁護士から電話がかかってきて、スピーカーフォンがセンターコンソールから鳴り響いた。

弁護士の落ち着いた声が聞こえてきた。「藤原さん、ご安心ください。事件の進展は順調です。あまりご心配なさらなくて結構です」

藤原晴子もほっとしたが、眉間にはまだ皺が寄っていた。「桜井美月の供述調書は警察から提供してもらえますか?一部必要なので、整理したいのですが」

弁護士は一瞬躊躇してから、明らかに和らいだ口調で答えた。「おっしゃる資料は、今朝寺田補佐が持ち帰りました。整理した証拠も既に私のところに届いています」

藤原晴子は眉を上げ、少し世間話をしてから電話を切った。

小山千恵子は横を向いて、藤原晴子の表情が少し不自然で、怒ったような様子なのを見た。

「どうしたの?」小山千恵子は軽く笑いながら尋ねた。