小山実家を離れた千恵子は、A国行きのビザとチケットの手配に取り掛かった。
彼女は必ず行かなければならなかった。
そう固く決意していたものの、あの方がいる場所については、まったく見当がつかなかった。
A国北部はあまりにも広大で、どんなに手を尽くしても、いつ見つかるかわからなかった。
千恵子は私立探偵に電話をかけ、二十年前に移住した華僑、特に現在は控えめに隠居している人物を重点的に調査するよう依頼した。
同時に千葉隆弘も、配下の者たちにA国での調査を展開させ、千葉家のA国での商業ネットワークを利用して捜索を進めた。
しかし、もともと姿を消すつもりだった人物を探すのは、まさに大海に針を探すようなものだった。
千恵子は写真の一角と、母の遺品の中から見つけたばかりのペンダントしか持っておらず、容姿も年齢も分からなかった。