第140章 最初から彼女が白血病だと知っていた

千葉隆弘は優しく微笑んだが、足を止めて近づくのを控えた。

千葉グループの医療チームの新薬について、まだ確信が持てなかった。

重要な抽出物がまだ一つ足りず、さらなる交渉が必要だった。

「千恵子さん、しばらく休養してください。海都市の方の手配が整い次第、すぐにお知らせします」

藤原晴子は小山千恵子のベッドを下げ、部屋の明かりと温度を調節してから、千葉隆弘と共に病室を出た。

誰にも聞かれないことを確認してから、せっかちな藤原晴子は小声で尋ねた。「隆弘、あの抽出物の進展はどう?」

彼女は千葉隆弘が最近それで頭を悩ませていることを聞いていた上、小山旦那様が突然亡くなったこともあり、この重要な抽出物の件は全く進展がなかった。

千葉隆弘の表情は病室にいた時とは打って変わって厳しく、声を潜めて重々しく言った。「良い進展はありません。悪い方はありますが。帝都のある研究所が抽出技術を持っているのですが、企業の代表との面会を一貫して拒否しています。私は一度も会えていません」

藤原晴子は舌打ちした。「人命に関わる問題なのに、なんでこの学者たちは威張っているのよ。だめだわ、何か方法を考えないと。もう遅らせている時間はないわ。連絡先を教えて」

千葉隆弘も躊躇せず、すぐに連絡先と状況を藤原晴子に送った。当面の急務は何としても抽出物を入手し、新薬を作って小山千恵子に使用することだった。

藤原晴子は直接駐車場に向かい、赤いジープ・ラングラーに乗り込んで、携帯で住所を確認すると、眉を上げて何か見覚えがあるような気がした。

「この住所は…」藤原晴子は独り言を言いながら、突然驚いた表情を見せた。

これは以前、機器検査報告書を提供した研究所ではないか?

藤原晴子は胸が沈む思いで、アクセルを踏んで発進した。

どうしても研究所の責任者に会う方法を見つけなければならない。

しかし藤原晴子が入口に着くと、受付に止められてしまった。

「お客様、予約はございますか?」

藤原晴子は落ち着きを取り戻し、髪を整えながら「いいえ、申し訳ありません。研究所の責任者にお会いするには、どのように予約すればよろしいでしょうか?」

受付は難しい表情を浮かべた。「福田博士にお会いになりたいのですね?最近、福田博士は来客が多すぎて、現在は必ず事前予約が必要となっております」