浅野武樹の目は鋭く、桜井美月を見つめる眼差しは背筋が凍るようだった。
脅される側であるはずの浅野武樹の表情が、逆に彼女を震え上がらせた。
最初は、ただ浅野武樹を手に入れたいだけだった。
ここまで来て、あやうく投獄され、名誉も地位も失いかけた。
何度も考えた、この道をいつまで歩き続けるのかと。
しかし黒川芽衣が彼女を黒川家に引き入れ、一歩一歩と権力の頂点へと導いていった。桜井美月はもう引き返せないことを悟った。
それでも心の片隅で、不安が渦巻いていた。
浅野武樹が小山千恵子を思い出した時の優しい表情を見ると、その不安はより一層痛みを増した。まるで彼女に告げているかのようだった。ある事において、自分は一度も勝てたことがないのだと。
小山千恵子と渡辺昭は息を切らしながら甲板の上に登った。目の前には私用機が離着陸できる広大な滑走路が広がっていた。