第125章 ベッド写真が流出した

浅野武樹の目は鋭く、桜井美月を見つめる眼差しは背筋が凍るようだった。

脅される側であるはずの浅野武樹の表情が、逆に彼女を震え上がらせた。

最初は、ただ浅野武樹を手に入れたいだけだった。

ここまで来て、あやうく投獄され、名誉も地位も失いかけた。

何度も考えた、この道をいつまで歩き続けるのかと。

しかし黒川芽衣が彼女を黒川家に引き入れ、一歩一歩と権力の頂点へと導いていった。桜井美月はもう引き返せないことを悟った。

それでも心の片隅で、不安が渦巻いていた。

浅野武樹が小山千恵子を思い出した時の優しい表情を見ると、その不安はより一層痛みを増した。まるで彼女に告げているかのようだった。ある事において、自分は一度も勝てたことがないのだと。

小山千恵子と渡辺昭は息を切らしながら甲板の上に登った。目の前には私用機が離着陸できる広大な滑走路が広がっていた。

渡辺昭は小山千恵子を前方のヘリコプターへと導きながら、息を整えつつ尋ねた。

「無事でよかった。叔父がこのクルーズ船に隠れていたなんて、今まで知らなかったよ!」

小山千恵子は不安そうに振り返りながら答えた。「確かに彼と会ったわ、二度も。浅野武樹がいなかったら、私はもう生きていなかったかもしれない。」

彼女の心は落ち着かなかった。シシさんの安否を確認する時間がなかったことも気がかりだった。

今となっては、彼女が自力で身を守れることを願うしかなかった。

結局、小山千恵子自身も身の安全を確保するのが精一杯だった。

この経験を通じて彼女は理解した。このような危険な場所では、自分の身を守る能力さえあれば、他人に迷惑をかけないことが、最大の助けになるのだと。

ヘリコプターが後方から接近し、はしごが次々と降ろされる中、突然後ろから怒号が響き、野獣の咆哮が混ざっていた。

「小山千恵子、逃げられると思うなよ!」

小山千恵子の体が震え、肩が大きく揺れた。

振り返らなくても分かった。大野武志が部下と猟犬を連れて追いついてきたのだ!

渡辺昭はため息をつき、はしごと追っ手との距離を確認すると、小山千恵子を安全にはしごに乗せ、落下防止用の安全装置を装着した。

小山千恵子ははしごにしっかりとしがみつき、数段上った。しかし、下からの足音が聞こえなかった。

「渡辺昭、早く!」