寺田通は焦って言った。「浅野社長、あなたの意図が分かりません。」
小山千恵子が出て行ったばかりなのに、浅野社長がこんなに薄情なはずがない!
今や浅野グループは内憂外患の状態で、いつ取締役会が浅野武樹を弾劾して、二人に即座に荷物をまとめて出て行けと言われても、少しも不思議ではない。
以前の投融資プロジェクトもまだ決着がついていないのに、社長は自暴自棄になったのだろうか。
浅野武樹は両手をテーブルについて、前髪が目を隠し、表情が見えなかった。
彼は一瞬躊躇してから、下から契約書を取り出した。「まずこれを見てください。」
寺田通は契約書を受け取り、パラパラとめくって、理解した。
「結婚を利用して、黒川家が奪った株式を取り戻すつもりですね。でもこれは危険すぎます!」
浅野武樹の暗い目は書類に戻り、寺田通は彼がもう話さないだろうと思ったが、出て行こうとした時、かすれた声が静かに聞こえた。