浅野実家。
かなりの時間をかけて、桜井美月は家全体をほぼ片付け終えた。
浅野遥の黙認を得たため、全過程は順調で、家には小山千恵子の痕跡は一切残っていなかった。
今日は浅野武樹が引っ越してくる日だった。
寺田通は黒のカリナンで浅野実家の中庭に入り、トランクから二つのスーツケースを取り出した。これが浅野武樹の荷物の全てだった。
桜井美月は既に玄関で待っていたが、来たのが寺田通だけだと分かると、一瞬表情が曇った。
寺田通は桜井美月に頷いて挨拶を済ませた。
以前の出来事があって、彼は心の底からこの女を軽蔑していた。
しかし、今や彼女は堂々と浅野実家に入り込んでいる。部外者の自分には、何も言えなかった。
寺田通はスーツケースを持って、慣れた様子で二階に上がり、主寝室の前まで来た。ドアを開けると、そこには既に女性と子供の用品が置かれていた。