第203章 浅野武樹の興味を引く

小山千恵子は穏やかに微笑んで、少しも意外に思わなかった。

浅野遥が賛成票を投じるなら、それこそ奇妙なことだったはずだ。

桜井美月に居座らせて、自分の地位を奪わせるという考えは、きっと浅野遥というこの老狐が提案したものだ。

確かに彼には帝都で雲をも手のひらで転がすほどの勢力と手段があり、黒を白と言いくるめることもできる。

しかし、運命の輪は巡るものだ。

かつての彼女は、浅野家という大樹に寄生する浮き草に過ぎなかった。

だが今は、浅野遥と対抗できる自分なりの手段を持っている。

小山千恵子は落ち着いて穏やかに口を開いた。「浅野社長、反対の理由をお聞かせいただけますか?」

浅野遥の細長い目に光が宿り、表情には温かみが一切なかった。

「小山お嬢さんの企画案は確かに素晴らしいものですが、あなたはただのデザイナーで、経験も浅く、会社経営にも経験が不足しています。現在好調なこの事業が、あなたの手で同じように維持できるという保証はありません」

小山千恵子は眉を上げ、もう何も弁解するつもりはなかった。「わかりました。ありがとうございます、浅野社長」

彼女の企画案には、すでにこの点について詳細で明確な説明が含まれていた。

浅野遥はただ、自分の反対票に合理的な理由を付けただけだった。

小山千恵子は冷静に自分の持ち物を片付けながら、横目で浅野武樹を見た時、心が震えた。

男は長テーブルの端に座り、彼女から目を離さずに見つめていた。その眼差しには……

探究心、好奇心、そして必ず手に入れるという決意が込められていた。

獲物を狙う猟師のような眼差しだった。

小山千恵子は顔が熱くなり、手元が少し慌ただしくなった。

このような露骨な視線は、随分と久しぶりだった……

小山千恵子がドアの前まで来て、今日はこれで終わりだと思った時、ある取締役が質問を投げかけた。

「小山お嬢さん、お待ちください。ニエバイデザインの法人代表者は資料によると黒川真雪となっていますが、御社の背後に黒川家の出資があるのでしょうか?」

その言葉に、他の取締役たちも小声で話し始めた。

浅野家は常に帝都の名門の頂点に位置し、かつての栄光を誇った黒川家と比較されることが多かった。

黒川家が今は衰退しているとはいえ、浅野グループは黒川家の存在に特に敏感だった。