第252章 子供のために救急車を呼んで

小山千恵子と浅野武樹は展示センターの入り口に入ると、藤原社長は遠くから軽く頷いただけで、気を利かせて立ち去った。

小山千恵子は展示会を適当に見ながら、真剣な表情で眉をひそめている浅野武樹を横目で見ていた。

記憶喪失になってから、彼はまだここをじっくり見ていないようだった。

ある学生が展示を見ていて足元に気を付けず、浅野武樹の背中に突然ぶつかり、慌てて謝った。「申し訳ありません、前を見ていませんでした。」

浅野武樹は頭痛で耳鳴りがし、大きな体がふらつき、壁に手をついて支えた。

小山千恵子は驚いた表情を見せた。浅野武樹がなぜ突然このような状態に?

男は手を振って「大丈夫だ」と言った。

この場所にはあまり来なかった。というのも、ここに来るたびに良い気分にはならず、頭痛がしたり気分が落ち込んだりした。唯物論者でなければ、この場所に何か問題があるのではないかと思うほどだった。