第251章 それは私たちの子供

横山先生は状況を見て、何も言わずに挨拶だけして診察に戻った。

浅野武樹は黙って第一病院を出て、心の中は乱れていた。

黙って車に乗り込んだ浅野武樹は、しばらく考えてから口を開いた。

「いつのことだ？」

小山千恵子は目を伏せてシートベルトを締め、シートに寄りかかりながら、静かな声で答えた。「重要なの？もう過去のことよ。」

浅野武樹はいつもと違って執着を見せ、助手席に座る平然とした女性の方を頑固に見つめながら、低い声で少し震えながら言った。

「重要じゃないのか？あれは俺たちの子供だろう。」

小山千恵子は表情を引き締め、喉が詰まった。

そうだ、あれは彼らの最初の子供だった。

この世界を見る前に、流産してしまった。

小山千恵子は浅野武樹の心の崩壊を感じ取り、少し心が和らぎ、静かに答えた。