横山先生の診察室にて。
女性が出て行き、足音が遠ざかっていくのを聞いて、浅野武樹は再び座り直した。「横山先生、続けてください。」
横山先生は頷き、正直に答えた。「モリ先生から返事がありました。帝都に実験室を設置し、臨床実験を行うことに同意してくださり、あなたの寛大さにも感謝しているとのことです。ただし…」
浅野武樹は眉をひそめた。「どうしました?」
横山先生はため息をつきながら、「モリ先生は、あなたに事前に知っておいていただきたいことがあるそうです。まず、実験過程はかなり苦痛を伴うものですが、これについては、あなたもニュースでご存知かと思います。」
浅野武樹は調査をしていた時、初めてモリ先生の研究テーマを見た時の荒唐無稽さを思い出した。
しかし、より荒唐無稽なことに、多くの薬が効果を失い、過去を思い出したいという切迫感が日に日に増す中で、このような臨床実験も受け入れられるようになっていた…