小山千恵子は浅野武樹が謝罪の言葉を口にするのを聞いたことがほとんどなかった。
彼は滅多に間違いを犯すことはなく、たとえ間違えたとしても、壁にぶつかるまで引き下がらない性格だった。
小山千恵子は返事に困っていた。
大丈夫?
どうして大丈夫なはずがない。
彼はほんの少し思い出しただけで、自分がかつてどれほど酷い人間だったか分かったのだから。
許さない?
でも今となっては、許すか許さないかなんて、もう重要なことだろうか……
彼が彼女に負っているものは、一言の謝罪で清算できるようなものではなかった。
浅野武樹は喉仏を動かし、体を半分千恵子の方に向け、墨のような瞳に謝意と真摯さを満たして、苦しそうな声で口を開いた。
「千恵子、本当に申し訳ない」
小山千恵子は今度ははっきりと聞き取れたが、かえって寂しげに微笑むだけだった。「あなたが謝るなんて、まだ全部思い出していないってことね」
そうでなければ、軽々しい謝罪が羽毛のように軽いことを知っているはずだから。
小山千恵子は車を降りた。高熱で確かに足がふらついており、数歩よろめいて、車に寄りかかってようやく体を支えた。
浅野武樹は数歩で回り込み、手を伸ばして支えようとした。「歩けますか?」
小山千恵子は頷き、かすれた声で言った。「それと、浅野社長は私のことを小山お嬢さんと呼んだ方が耳障りがいいと思います。私たちは今、上司と部下の関係でしかないのですから……」
浅野武樹は目を細め、心の中で怒りが湧き上がったが、深い悔しさに押し潰された。
こんなに具合が悪いのに、まだそんなことを言うのか?
この女はずっとこんなに頑固だったのか?
浅野武樹は腕を伸ばすと、小山千恵子の両足が地面から離れた。
「浅野武樹、何するの!降ろして!」
男は大股でVIP救急外来に向かいながら、冷たい声で言った。「小山お嬢さん、あなたの歩みが遅すぎるので、緊急事態だからです。それに、あなたも私のことを浅野社長と呼んだ方が適切ですよね?」
小山千恵子は怒りで目が暗くなりそうになり、思わず顔を襟元に埋めた。
恥ずかしい時は、顔を隠すのが一番効果的だった。
偶然にも、今日は横山先生が血液科から救急科への当番日で、小山千恵子が点滴を始めるとすぐに駆けつけてきた。
「小山お嬢さん、どうして急に熱が出たんですか?」