小山千恵子は浅野武樹が謝罪の言葉を口にするのを聞いたことがほとんどなかった。
彼は滅多に間違いを犯すことはなく、たとえ間違えたとしても、壁にぶつかるまで引き下がらない性格だった。
小山千恵子は返事に困っていた。
大丈夫?
どうして大丈夫なはずがない。
彼はほんの少し思い出しただけで、自分がかつてどれほど酷い人間だったか分かったのだから。
許さない?
でも今となっては、許すか許さないかなんて、もう重要なことだろうか……
彼が彼女に負っているものは、一言の謝罪で清算できるようなものではなかった。
浅野武樹は喉仏を動かし、体を半分千恵子の方に向け、墨のような瞳に謝意と真摯さを満たして、苦しそうな声で口を開いた。
「千恵子、本当に申し訳ない」
小山千恵子は今度ははっきりと聞き取れたが、かえって寂しげに微笑むだけだった。「あなたが謝るなんて、まだ全部思い出していないってことね」