桜井美月は心の中で警報が鳴り響き、必死に顔の動揺を隠した。
目の前の店員と警備員の態度が強硬なのを見て、強く出ても解決にはならないと悟り、とりあえずこの数枚の写真を確保することが急務だった。
桜井美月は目を細め、恥ずかしそうに俯きながら、ロック解除したスマートフォンを差し出し、小声で呟いた。
「実は、泥棒は見つけられませんでした……でも、この方のドレスがとても素敵で、後で店舗に注文方法を聞きたいと思って」
警備員と店員は動じる様子もなく、厳しい表情のまま手順通りに監視カメラの写真をすべて確認した。
桜井美月は息をするのも怖かったが、自ら削除を申し出ることもできず、黙っていることで非常に気まずい雰囲気が漂った。
「もちろん、店舗でわからなければ、明日会社でウィリアム社長に聞いてみます」