第281章 桜井美月に教訓を与える

翌日早朝、小山千恵子は車を運転して中腹別荘デザイン事務所に到着した。

数日後に開催されるスポンサーパーティーの前に、桜井美月に教訓を与えなければならなかった。

彼女は覚えていた。帝都に戻ってきた時、パーティーで桜井美月に会ったことを。

彼女のあの幽霊でも見たような表情を思い出すと、小山千恵子は今でも少し笑ってしまう。

後ろめたいことをたくさんすれば、人は臆病になるものだ。

ひょっとしたら、吹く風一つにも命を奪われそうな気がするのかもしれない。

スタッフに挨拶を済ませ、小山千恵子は慣れた様子で展示ホールを通り過ぎ、直接奥のデザインエリアへと向かった。

約束の時間より早く着いていた。

あの衝立の壁を通り過ぎる時、小山千恵子は足を止めた。

以前、ここには巨大な油絵が掛かっていて、それは彼女の姿を描いたものだった。