第282話 汚れたものは捨てるしかない

熊谷玲子は体を固くし、目をさまよわせた。

これは確かに小山千恵子のドレスで、桜井美月は本当に嗅覚が鋭い。このわずかな痕跡まで見抜かれてしまった。

小山千恵子も陰で冷や汗をかき、姿を現そうとした時、熊谷玲子は冷静に口を開いた。

「マネキンの消毒液の匂いです。お気に召さないようでしたら、別のものをご用意できます」

彼女は桜井美月がただ難癖をつけたいだけだと見抜き、冷たい表情で適当な嘘をついた。

桜井美月は早くこの華麗なドレスを着たくて仕方がなく、冷たく鼻を鳴らしながら試着室に入った。

小山千恵子は静かに歩み出て、熊谷玲子は呆れた表情を見せながら、腕を組んで脇に寄りかかり、観戦モードに入った。

試着室から桜井美月の声が聞こえた。「手伝いに来て」

小山千恵子はカーテンの隙間に近づき、手を入れて紐を結び始めた。