桜井美月は胸を撫で下ろした。少なくとも浅野遥という後ろ盾は、まだ完全には崩れていなかった。
彼女は慎重に口を開いた。「もちろん、浅野おじさまのことは全力を尽くします。ただ、この秀正というのは?」
浅野武樹の表情は柔らかくなり、機嫌が良さそうだった。
「秀正は私の息子だ。いろいろな事情があって、そばに置いていなかったんだ。」
桜井美月の瞳が震え、視線が定まらなかった。
これは彼女が知っていい事なのだろうか?
浅野遥は動揺する女を見つめ、ため息をついた。「もう隠す必要もないだろう。私も数年で退職する。浅野家には後継者が必要だ。」
桜井美月は両手を強く握りしめ、うなずいた。「はい、浅野おじさまのおっしゃる通りに。」
浅野遥はこめかみを揉みながら、少し悩ましげな様子を見せた。「年齢的には、お前が姉だな。秀正は確かに少し気ままで遊び好きだが、頭は良い。彼が帰国したら、目を光らせてくれ。浅野家に迷惑をかけないように。何かあったら、すぐに報告してくれ。」