第318章 奴こそが負け犬

拍手喝采が轟き、小山千恵子の頭の中にも蜂が飛び回るような轟音が響き、混沌としていた。

浅野遥は上質な三つ揃いのスーツを身にまとい、白髪交じりの髪を整然と梳かし、しっかりとした足取りで壇上に上がった。

「本日は浅野グループ初のファッションショーにご来場いただき、誠にありがとうございます。ファッション業界への参入は、慎重に検討を重ねた末の決断でございます……」

浅野遥の響き渡る声が会場全体に広がり、小山千恵子は壇上を食い入るように見つめ、一言も聞き逃すまいとした。

ポケットの中の携帯電話が突然振動し、彼女は驚いて飛び上がった。

会場で何か問題が起きたのではないかと心配になり、小山千恵子は急いで携帯を取り出した。手が震え、何度か試してようやくロックを解除できた。

新着メッセージを開くと、小山千恵子の表情が和らいだ。

【浅野武樹:そんなに緊張しないで。何が起きても、私には対処する方法がある。】

小山千恵子は耳が熱くなり、携帯の画面の反射で自分の表情を確認した。

眉間にしわを寄せ、心配そうな表情で、確かに緊張しきっている様子だった。

彼女は呼吸を整え、思わず客席の方を見やった。

浅野武樹は少し離れた後方の席に座っており、小山千恵子と目が合った。

浅野武樹の表情ははっきりとは見えなかったが、小山千恵子にはわかった。彼の顔には優しく安心させるような微笑みが浮かんでいるはずだと。

浅野遥は長々と話すのを好まない人だったので、すぐにスピーチは終盤に入った。

小山千恵子の心はかなり落ち着き、手のひらの汗も引いていた。

これは結局、浅野グループの面目を保つための初めての大きなショーだ。浅野遥はただ私生児に顔を出させたいだけなのかもしれない。

結局のところ、帝都のこれほど多くの重要な上層部や名家の前で、家の恥を晒したい人などいないだろう……

再び拍手が起こり、スピーチを終えた浅野遥は一礼して退場するはずだったが、まだ何か言いたいことがあるようだった。

拍手が再び適切なタイミングで終わると、浅野遥は習慣なのか意図的なのか、壇の横の方向に一瞥を投げかけた。

その一瞥で、小山千恵子の体は凍りついた。

「また、この機会に帝都の各界の皆様にひとつご報告させていただきたいことがございます。」

会場のスタッフたちも緊張した様子で、ひそひそと話し合っていた。