第299章 お前は昔クソ野郎だった

浅野武樹は表情を引き締め、頭の中で電気が走ったような感覚を覚えた。

黒川芽衣、あれは桜井美月の実母ではなかったか……

彼女がどうして大野武志と関係を持つことになったのだろう?

尋ねようとした瞬間、二人の間に小さな肉団子が割り込んできて、幼い声が躊躇いがちに口を開いた。

「パパとママ、何か悪いことしてるの?」

小山千恵子は顔を赤らめ、慌てて一歩後ずさりして浅野武樹との距離を取った。

男の唇の端に浮かぶ笑みを見て、小山千恵子は大根を引き抜くように優子を部屋の中に抱え込み、急いで言った。

「情報は先に流しておいて、他のことは、後で話しましょう。」

ドアがバタンと閉まり、浅野武樹は後ろに身を引いて、鼻をぶつけそうになった。

しかし、小山千恵子の慌てた様子と、久しぶりに見せた少し恥じらいのある表情に、彼の気分は大いに良くなった。