第300章 彼はもう小山千恵子の愛を求める資格がない

寺田通は容赦なく、浅野武樹の痛いところを突いて踏みにじった。

浅野武樹は目の前がぼやけ、ウイスキーのストレートを一杯飲み干して、ようやく正気を取り戻した。

まだ取り戻せていないこの記憶は、目の前の苦い酒よりも消化しがたいようだった。

彼は苦しそうに口を開いた。「あの時、俺はこのことを知っていたのか?」

寺田通は肩をすくめた。「もちろん知っていた。そんなに自分を責めるな。お前も確かに駆けつけたんだから」

浅野武樹の心は少しも軽くならなかった。

小山千恵子にこんなことが起きるべきではなかった!

しかし今となっては、後悔しても無駄なことだった。

浅野武樹はこめかみを揉みながら、酒のせいなのか、それとも受け入れがたい過去のせいなのか、めまいを感じていた。

「寺田、帰ってくれ。一人になりたい」