寺田通は容赦なく、浅野武樹の痛いところを突いて踏みにじった。
浅野武樹は目の前がぼやけ、ウイスキーのストレートを一杯飲み干して、ようやく正気を取り戻した。
まだ取り戻せていないこの記憶は、目の前の苦い酒よりも消化しがたいようだった。
彼は苦しそうに口を開いた。「あの時、俺はこのことを知っていたのか?」
寺田通は肩をすくめた。「もちろん知っていた。そんなに自分を責めるな。お前も確かに駆けつけたんだから」
浅野武樹の心は少しも軽くならなかった。
小山千恵子にこんなことが起きるべきではなかった!
しかし今となっては、後悔しても無駄なことだった。
浅野武樹はこめかみを揉みながら、酒のせいなのか、それとも受け入れがたい過去のせいなのか、めまいを感じていた。
「寺田、帰ってくれ。一人になりたい」