第330章 距離が近すぎるのではないか

浅野武樹は手の怪我がまだ治っていなかったが、小山千恵子を力強く抱き上げた。腕の筋が浮き出るほど痛かったが、少しも手を緩めることはできなかった。

医師と看護師が急いで駆けつけてきた。「浅野さん、どうされましたか?」

看護師は入室するなり、浅野武樹に抱かれた顔色の悪い、汗びっしょりの小山千恵子を見て一瞬驚いた。すぐに彼女の柔らかな体を受け取り、救急処置を開始した。

「機器の準備を!」医師は振り返って急いで尋ねた。「何を食べて、薬は飲みましたか?転倒はありましたか?」

浅野武樹は髪が乱れ、目には自責の念と心配が満ちていた。「食事は病院から届いたものなので、問題はないはずです。私が側にいなかったので、他に何があったかはわかりません。」

医師の目に明らかな失望の色が見えたが、看護師の方から小声で報告があった。「心拍、血圧などの数値は正常です。体温37度で、発熱の兆候は見られません。」