第323章 一族みんな碌でなし

小山千恵子の目に熱い涙が溢れ、一瞬にして視界が曇った。

一滴の涙がページの上に落ち、文字が少し滲んだ。

ノートの端はすでに少し黄ばんでいたが、持ち主に大切にされ、よく読み返されていた。

小山千恵子は震える唇で、テーブルからティッシュを取り出し、目の熱さを拭い去った。

目を閉じると、心の中の感情が止めどなく溢れ出した。

小山千恵子は指先で黄ばんだノートのページを優しくめくり、丁寧に読み進めた。

——今日は彼女の葬儀だった。彼女が見た目は弱々しく小柄だったが、実は心がこんなにも冷たかったとは今になって分かった。

——遺灰では身元確認ができないことは、もちろん知っていた。ただ自分を騙したかった。あの小さな箱の中にあるのは、彼女ではないと。

——しかし彼女はすでに遺体の身元確認書を用意していて、さらには髪の毛まで残していた……私に諦めさせるためだったのか。

小山千恵子は喉が詰まり、すでに濡れたティッシュを強く握りしめ、呼吸が荒くなった。

そうだ、あの時の彼女はすでに心が死んでいた。浅野武樹の偏執的で残酷な愛に苦しめられ、時には憎しみよりも辛いものだった。

最後には、もう分からなくなっていた。浅野武樹の自分に対する感情が愛なのか、それとも憎しみなのか。

だから彼女は徹底的にやった。浅野武樹のことをよく知っていたから。

この男は生きているのか死んでいるのか確認できなければ、決して諦めないだろう。彼を欺くには、万全の準備が必要だった。

しかし小山千恵子が予想していなかったのは、浅野武樹の偏執が、想像以上に手に負えないものだったということだ。

おそらく自分が息を引き取るところを直接見なければ、かつての小山千恵子がすでに死んでしまったことを信じなかっただろう。

小山千恵子は快適なソファに座っていたが、心の痛みで手足がしびれ、硬直したままノートをめくり続けた。

——彼女の姿が見えるような気がする。時には彼女が好きだったインテリアショップの角で、時にはカフェの窓際の席で。それが彼女だと分かっているし、彼女ではないとも分かっている。

——福田千尋は私が病気だと言う。そうかもしれない。もう54日が経った。彼女は戻ってこない。

——病気又何だというのか。どうせまた会えるのだから、そうだろう。