第327章 誰が彼女の名を出す勇気がある

寺田通は頭が真っ白になって数分間、浅野武樹に電話をかけた。

「はい?」男はすぐに出た。「何か問題でも?」

寺田通は反射的に答えた。「いいえ、問題は…いや違います!浅野社長、大丈夫ですか?怪我は重いですか?」

浅野武樹は咳払いをして、声が少し明るくなった。「大したことない。数日休めば良くなるだろう。他に何かあるか?」

寺田通は眉間をこすりながら、姿勢を正し、顔には困惑と悩みが浮かんでいた。「浅野社長、全ての株式を譲渡するとおっしゃいましたが、裁判は諦めるということですか?」

浅野武樹の声は相変わらず冷たく硬かった。「裁判はする。子供は桜井美月に渡すつもりはない。」

もし浅野遥と浅野秀正が本当にそのようなグレーゾーンのビジネスをしているなら、幼い健一郎が彼らによってどこかに送られ、どんな冷血な殺人者に育てられるか、ほぼ確信できた。